個人事業主のM&A(概要編)

■ 個人事業主でもM&Aはできる

M&A というと会社間の吸収合併などのイメージが強く、「個人事業主」 には関係のない世界という考えをお持ちの方も少なくないようです。 でも、 個人事業主だからといってM&A ができないわけではありません。実は、最近はこうした個人事業主のもつ技術ノウハウ、顧客との取引、 または従業員などの資産価値に着目して、M&A が成約しているケースが増えています。個人事業主だからといって引き継ぎ相手が見つからないと諦めないで、 廃業する前に一度、 相手探しをされてみてはいかがでしょうか?

■ M&Aは超売り手市場

スモール M&A とよばれる中小企業を中心とした M&A 取引の現場では売り手の案件1件に対して、 10件以上の買い手が名乗りを上げています。 まさに超売り手市場なのです。
さらに最近の傾向としては、 大手企業を早期退社した40歳~50歳代のサラリーマンが、 あらたな人生の再スタートとしてその退職金などを原資に小さな会社を買いたい、
または価値ある事業、 技術を体得して老後まで働きたいという傾向が増えてきているというのです。
(人生100年時代ということもあり、私の友人でもこのような話をしている人は非常に多い印象です。)

■ どんな手続きになるのか

一般的に M&A には 2 種類の型式があります。
①株式を売買する型式
②事業に係る財産または財産および負債を合わせて売買する型式
個人事業主の M&A の場合、 法人格と違って株式は存在しませんので後者の事業に係る資産、
または資産と負債の両方を売買するという型式をとることになります。

■ 個人事業主の資産、 負債とは  

個人事業主の事業に係る資産とは何を指すのでしょうか。 法人と違い、個人事業の場合はプライベートの持ち物なのか、そうでないのかが線引きしにくいものも多く存在すると思います。
実務的には、個人と事業を整理して分割するというよりは、事業を引き渡す相手と話し合いによって何を引き渡すのかを個別に決めていく作業となります。
事業に使用する機械設備や材料などをはじめ、対象となるもののリストをM&A経験豊富な税理士や会計士にも協力してもらい、 一緒に作成するのが良いでしょう。
また司法書士や弁護士さんに相談し、事業譲渡契約をしっかりと締結しておくことが重要です。
具体的にどのようなものを対象として譲りわたすのかを考えてみましょう。
1 動産 機械設備、 材料、 商品など
2 売上債権(売掛金、 受取手形など)または買入債務(買掛金、支払手形)
3 従業員
4 営業権
これらをいくらで引き渡すのかは決まりはなく、売り手と買い手の話し合いで決めていきます。
とはいえ、1の動産2の売掛金などを引き継ぐ場合は確定 申告書の内容を参考にした会計上の金額で決めることが多いといえます。
3の従業員は金額に織り込むというよりは売り手側としては従業員が今後も安心して働ける様に譲渡後も引き続き雇用を継続することを条件にするケースがよくあります。

一方で、 従業員が存在しないと事業が成り立たない場合、買い手側の大きなリスクとなりますので、一定期間の間従業員が辞めないこと買い手側から条件に求められるケース もあります。
さて、 重要なのは4の営業権の評価です。
これは目に見えない事業の価値などと言われ、ノウハウや、顧客との関係やブランド力など、 なかなか金額の算定 が難しい作業となります。
そこで、相互に納得のしやすい方法がキャッシュ ・ フロー (将来の手取り収入) の何年分かを、その評価とするケースが多いのです。
例えば、 年間で300万円のキャッシュを生み出す事業で あるならば、 その3年分なら900万円ということになります。
その価値がすごく高いと評価されたら5倍以上の価値となるケースもあります。
前述したように買い手が10者以上も現れるケースでは、この営業権の評価が10通り存在しますので買い手側の買収 希望価額もそれぞれに大きな差が出るようです。
廃業を考えていた事業者が相手を募集したら、20者以上の買い手が現れ、希望していた売却価額の何倍もの金額で譲渡ができたという成功事例も存在するぐらいです。

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